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romancista
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準新作になったので借りて見ました。
20世紀初めのロンドンを舞台にした、2人の奇術師の話。
昔だからかも知れないですが、マジックショーというと華やかなイメージもあるのに、これは暗い貧しい大道芸の雰囲気です。(おかげで陰影が多くて映像が渋いですが)
観客は野卑で、危険なマジックで事故が起きることを期待しているし、演じるほうも安全が全く確保されていない。鳥を消すマジックなんて、つぶして殺して、消したと言張っているだけです。マジックというのは、本来はその程度のものなんでしょうけど。

含みのあるはっきりしないシーンは、最後の最後に種明かしがあります。
冒頭の殺人事件の種明かしももちろんあります。
だから停滞して見えて退屈…と感じても席をはずさないほうがいい。

手足を縛られた美女が水槽から脱出するマジックで、手足をしばってみたい人?といわれて出てきた二人はサクラで、片方は美女の夫でもある。マジックはうまくいき、すべては順調に見えたが、あるとき彼女は脱出に失敗し、舞台の上で溺死してしまう。
助手の片方が縛り方を変えたのだろうか? 夫であるAは問い詰めるが、Bは覚えていないと繰り返した。そして家庭をなくし、仕事もないAに比べ、知り合った娘と家庭を築き、とんとん拍子に一流マジシャンになってゆくB。
そのBのやり方は斬新だが危険と隣り合わせだった。そこそこの成功では飽き足らないAは、人間瞬間移動を始めたBのトリックをどうにかして自分のものにしたいと思い、日誌を手に入れ、それに沿ってアメリカの山中へ出向く。そしてそこで会った科学者から、本物の(ここらSF)瞬間移動装置を譲り受けることに成功する。

最後はBがAのものすごいトリックに驚いて、舞台裏をのぞきに入るのです。すると舞台がパタンと開いてAが落ちてくる。しかもちょうどその真下にあった水槽の中に! Bが焦ってあけようとするうちに、Aは溺死。Bが逮捕される。
自分を殺した罪でBが死刑になる。これこそAがBにかけた罠だった。


作った本人も封じろと言った瞬間移動装置でマジックを演じたAですが、それはもはやマジックではありませんでした。実験の結果、対象は移動するのではなく、別の場所にもうひとつ現れる。つまりAが移動するとき、もうひとりの自分が出現するのです。このマジックを繰り返せば何人も何人も自分が増えてしまう。替え玉がトリックをばらすのではないかという不安はないかわりに、ありえない増え方をした自分を密かに始末しなければならない。だから落ちる真下に水槽を設置してあった。
しかしBのしていたことはすべて演技であり、タネがある技だった。そのプロ精神は日常生活でも揺るぐことがなく、最愛の奥さんまで騙されて自殺してしまうほどでした。Aは、手を汚し犠牲を払うことはいとわなかったけれども、根本の所で奇術師としての道を踏み違えたのですね。

文中、名前はあるのですがAとBにしてあるのは、そもそもシナリオでもわざとABABを名前に使っているのでは?と思ったからです。2人はライバルで、いかにもいそうな奇術師AとBであり、有名過ぎて本名も本名に聞こえないAとBであり、そのくせ消えていっても気にされない、重要な人物なんかではないAとBだと。
ラストシーンはほっとできて好きです。





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