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北九州市立美術館・本館に、ジョン・エヴァレット・ミレイ展を見にいきました。
発音が一緒ですが、「落穂拾い」のジャン・フランソワ・ミレーとはまったく別人です。
この美術館は現代美術がそもそも専門らしく、とっても現代美術に相応しいデザインです。しかるに、ミレイはというと全然現代美術じゃないし、緑だらけのイギリスの自然一杯がコンセプト(それがラファエル前派)。しかもこの美術館に行くには、福岡からだとJRとバスを乗り継いで山の上まで結構な道のりがあります。周囲は何もなくて、眺めはいいのですがしかし工業地帯が一望できるだけというのはちょっと残念。
発音が一緒ですが、「落穂拾い」のジャン・フランソワ・ミレーとはまったく別人です。
この美術館は現代美術がそもそも専門らしく、とっても現代美術に相応しいデザインです。しかるに、ミレイはというと全然現代美術じゃないし、緑だらけのイギリスの自然一杯がコンセプト(それがラファエル前派)。しかもこの美術館に行くには、福岡からだとJRとバスを乗り継いで山の上まで結構な道のりがあります。周囲は何もなくて、眺めはいいのですがしかし工業地帯が一望できるだけというのはちょっと残念。
さてさて、展示室へ入りますと80点からの絵が並んでいました。
前半の目玉はやはり「オフィーリア」。
花輪を作って川辺に行き、そこで転落して溺死していくその様子をありありと描いています。
がしかし、実はこの絵は個人的に趣味でない。
花の種類が原作の地味な植物とは違って、いかにもビクトリア調の華美な花々を使っている。ロビンが枝に止っているのも、オフィーリアのポーズも、とってつけたように技巧に走っている。
だからむしろ、背景の柳の描写やイバラ(ドッグローズにしては花が違うような?)の見事さを間近で観察できたのが収穫です。
次に印象的だったのは「1746年の放免令」
スコットランドで捕まっていた男が、妻の尽力で自由の身になり、妻が子供を抱き迎えに来ている絵です。
ケガをした腕の包帯から、喜んで飛びついている犬の毛並みから、とにかくリアルで緻密。
放免された男の靴は皺が寄って艶もないのに、傍の役人の靴はピカピカ。
妻が尽力したのがなぜわかるかっていうと、もう迎えに来たときは喜ぶ顔もできないほど疲れきって、むしろ呆けたような顔になっているからです。
会場の半分くらいのところにあった「安息の谷間」
2人の尼サンが墓地にいて、一人は墓穴を掘っていて、1人はカメラ目線で座っている絵です。
背景の薄暗くなっていく雰囲気が素晴らしく、これのグッズ(マウスパッドなんかがよかった)は欲しかったけど、全然なかったです。
*まあ、墓地の絵だから、グッズはいかがなものかとも思うけど、オフィーリアだって発狂した上に溺死している絵なのにグッズ山のようにありました。ぱっと見きれいだけど、溺死娘の絵のついたマグカップなどやはりいかがなものk(殴)
次のコーナーの最初が「ローリーの少年時代」であります。
これはサー・ウォルター・ローリーが子供の頃、友人と一緒に船乗りの話に熱中している(熱中しているけどとてもお行儀良く体育座り)という絵です。ピアスをして日に焼けた船乗りの右手は遠く水平線を示し、左端には玩具の帆船が置かれていて、ローリーの将来を暗示というか、明々白々に示しているようです。
それから人物画が続きました。もっとも人気があるらしいのが「はじめての説教」「2度目の説教」という連作です。
ミレイの実の娘がモデルという、自然な表情の子供の絵です。初めての説教は神妙に聴いていた少女は、2度目のときは居眠りしちゃっています。
子供の絵だけど衣装や背景の色合いは渋く、なかなか気に入りました。
それから、最後に風景画がありました。
オフィーリアやマリアーナや放蕩息子も、こういう背景を描く力量によって美しい舞台を与えられた端役に過ぎないと思われました。演技や狙いのない、素直な自然の姿は本当に見ていて飽きない。しかもワタシの愛するスコットランド。絵葉書さえなかったのが残念ですが、きっと印刷であの色は出ないので、(「課題をやっている小学生に場所をあけてやらずに)目に焼き付けてきました。
風景画で一番好きなのは「おだやかな天気」という、静かな水辺を描いたものです。
ちょっと道から分け入ったであろう林が川に当たり、季節が秋で木々の葉が落ちつつあります。
水面はほんの少しだけさざなみが立っていて、全くの無風ということではありません。水面のすぐ上の枝にはカワセミがとまっています。じーっと見ていると、その水面がふっと動いて魚が上がってきそう。その瞬間をカワセミが見逃すはずもありません。林の奥のほうではきっと鳥の声がし、いつまでもそこにいれば風がびくっとするほど冷たくなるでしょう。ミレイの絵は見るものを絵の中に参加させるしかけのものがいくつもあるのですが、この絵こそ一番中に入りたかった。
脳内に充満していたマヤアステカの空気はこの美術館行きで、ほぼ一掃されました。
行くのちょっと大変だったけど(交通費もかかるし)、好きな絵のためにこれくらいは良いかなと思いました。
ミレイ展は8月17日まで開催されます。北九州市立美術館・本館
前半の目玉はやはり「オフィーリア」。
花輪を作って川辺に行き、そこで転落して溺死していくその様子をありありと描いています。
がしかし、実はこの絵は個人的に趣味でない。
花の種類が原作の地味な植物とは違って、いかにもビクトリア調の華美な花々を使っている。ロビンが枝に止っているのも、オフィーリアのポーズも、とってつけたように技巧に走っている。
だからむしろ、背景の柳の描写やイバラ(ドッグローズにしては花が違うような?)の見事さを間近で観察できたのが収穫です。
次に印象的だったのは「1746年の放免令」
スコットランドで捕まっていた男が、妻の尽力で自由の身になり、妻が子供を抱き迎えに来ている絵です。
ケガをした腕の包帯から、喜んで飛びついている犬の毛並みから、とにかくリアルで緻密。
放免された男の靴は皺が寄って艶もないのに、傍の役人の靴はピカピカ。
妻が尽力したのがなぜわかるかっていうと、もう迎えに来たときは喜ぶ顔もできないほど疲れきって、むしろ呆けたような顔になっているからです。
会場の半分くらいのところにあった「安息の谷間」
2人の尼サンが墓地にいて、一人は墓穴を掘っていて、1人はカメラ目線で座っている絵です。
背景の薄暗くなっていく雰囲気が素晴らしく、これのグッズ(マウスパッドなんかがよかった)は欲しかったけど、全然なかったです。
*まあ、墓地の絵だから、グッズはいかがなものかとも思うけど、オフィーリアだって発狂した上に溺死している絵なのにグッズ山のようにありました。ぱっと見きれいだけど、溺死娘の絵のついたマグカップなどやはりいかがなものk(殴)
次のコーナーの最初が「ローリーの少年時代」であります。
これはサー・ウォルター・ローリーが子供の頃、友人と一緒に船乗りの話に熱中している(熱中しているけどとてもお行儀良く体育座り)という絵です。ピアスをして日に焼けた船乗りの右手は遠く水平線を示し、左端には玩具の帆船が置かれていて、ローリーの将来を暗示というか、明々白々に示しているようです。
それから人物画が続きました。もっとも人気があるらしいのが「はじめての説教」「2度目の説教」という連作です。
ミレイの実の娘がモデルという、自然な表情の子供の絵です。初めての説教は神妙に聴いていた少女は、2度目のときは居眠りしちゃっています。
子供の絵だけど衣装や背景の色合いは渋く、なかなか気に入りました。
それから、最後に風景画がありました。
オフィーリアやマリアーナや放蕩息子も、こういう背景を描く力量によって美しい舞台を与えられた端役に過ぎないと思われました。演技や狙いのない、素直な自然の姿は本当に見ていて飽きない。しかもワタシの愛するスコットランド。絵葉書さえなかったのが残念ですが、きっと印刷であの色は出ないので、(「課題をやっている小学生に場所をあけてやらずに)目に焼き付けてきました。
風景画で一番好きなのは「おだやかな天気」という、静かな水辺を描いたものです。
ちょっと道から分け入ったであろう林が川に当たり、季節が秋で木々の葉が落ちつつあります。
水面はほんの少しだけさざなみが立っていて、全くの無風ということではありません。水面のすぐ上の枝にはカワセミがとまっています。じーっと見ていると、その水面がふっと動いて魚が上がってきそう。その瞬間をカワセミが見逃すはずもありません。林の奥のほうではきっと鳥の声がし、いつまでもそこにいれば風がびくっとするほど冷たくなるでしょう。ミレイの絵は見るものを絵の中に参加させるしかけのものがいくつもあるのですが、この絵こそ一番中に入りたかった。
脳内に充満していたマヤアステカの空気はこの美術館行きで、ほぼ一掃されました。
行くのちょっと大変だったけど(交通費もかかるし)、好きな絵のためにこれくらいは良いかなと思いました。
ミレイ展は8月17日まで開催されます。北九州市立美術館・本館
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COMMENTS
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私は9月に見にいきます。
いい予習になりました(*^^*)
私も個人的にはミレイのオフィーリアは、
自分の好みと違う気がするのですが。
他の絵もすごく楽しみになりました♪♪
・・・あ、ひどくお久しぶりでスミマセン・・・
以前鳥の絵をいただいたりしていた都路です。
その節は本当にありがとうございました。
いい予習になりました(*^^*)
私も個人的にはミレイのオフィーリアは、
自分の好みと違う気がするのですが。
他の絵もすごく楽しみになりました♪♪
・・・あ、ひどくお久しぶりでスミマセン・・・
以前鳥の絵をいただいたりしていた都路です。
その節は本当にありがとうございました。
私はベルエポック展で実際に見た
ポール・アルベール・ステックさんのオフィーリアが好きです。
やっぱり暗いですが(^^;
まぁ、暗い話ですもんね・・・。
ミレイさんのは現実的過ぎて、好みでないだけで、
やっぱりすごいなぁとは思いますが。
ミレイ展には今月19日に行ってまいります♪
テートのオフィーリアは夏中、イギリスを出て、日本で公開さえているってことになりますね。
テート太っ腹!てか、何も知らずに旅行でいくと、テートの2番人気作品は空(パネルかなにか?)ということに…。
ポール・アルベール・ステックさんのは私も好きですが、ちょっと光が差しすぎている気がします。フランスものらしいといえばらしいのですが。
でもオフィーリアに日本の夏は暑すぎて「頭がおかしくなりそう!」なくらいだったろうね。
テート太っ腹!てか、何も知らずに旅行でいくと、テートの2番人気作品は空(パネルかなにか?)ということに…。
ポール・アルベール・ステックさんのは私も好きですが、ちょっと光が差しすぎている気がします。フランスものらしいといえばらしいのですが。
でもオフィーリアに日本の夏は暑すぎて「頭がおかしくなりそう!」なくらいだったろうね。
夏、お嫌いというか、苦手なんですよね。
私も嫌いですが・・・。
6月は梅雨で鬱陶しかったでしょうしねぇ。
今度は冬がいいわとか思っているかもです。
あ、でも川の水は冷たいかもと心配ですが(><;
日本にいる間は所蔵している美術館がお留守って
ことですもんねぇ。すごいですねぇ。
お金ですかねぇ。(またせちがらいことを ^^;)
ポールさんのは明るいですよね。
明るくて薄い色が好きで、水滴とか花とか上手に
光っていて、
とても気に入ってしまいました。
・・・本当にただの単純な好みですね(^^;
でも絵ハガキだとそれが分かりにくくて残念でした。
やっぱり本物を見るって大切だなって思ったのでした。
隣のカウンターの小鳥4羽可愛すぎ・・・デス(///);
近年どんどん暑くなってきてますしね…。
オフィーリアが川で泳いで「さっぱりー」と出てくる、という展開も似合いそ(蹴)
ミレイのオフィーはこっちでは警備員さんつきのものものしさで、混雑すると人の頭で見えにくいとのことでした。
せっかくだからじっくり見れるといいですね。
全体はともかく、川のリアリティやロビンの可愛さは必見です。
カウンターまできちんと見ていただきありがとうございます。あってもなくても意味はないのですが、(笑)ゼロの子が「ぴ」というのが気にいってます。
オフィーリアが川で泳いで「さっぱりー」と出てくる、という展開も似合いそ(蹴)
ミレイのオフィーはこっちでは警備員さんつきのものものしさで、混雑すると人の頭で見えにくいとのことでした。
せっかくだからじっくり見れるといいですね。
全体はともかく、川のリアリティやロビンの可愛さは必見です。
カウンターまできちんと見ていただきありがとうございます。あってもなくても意味はないのですが、(笑)ゼロの子が「ぴ」というのが気にいってます。
スカートが浮き輪代わりの背泳ぎで?笑
そういえばこの絵からはあんまり「死」を感じない
気が致します。
人は多そうですね。
でも狩さまのコメント拝読した限り、
他にもたくさんよい作品があるみたいなので、
この際じっくりそちらも鑑賞してきたいなと
思いましたvv
正面向きの鳥でもこんなに愛らしいなんて・・・vv
あれ着たままはさすがに記録は出ないでしょうが。
というか、
あまり想像たくましくすると、作品をまじめに見られなくなりませんかね?(逃走)
>そういえばこの絵からはあんまり「死」を感じない
このオフィーリアの心の中は、このときは苦痛とも悲しみとも無縁なんだろうと思います。沈んでても自分が死ぬとかいう感覚がない(でもあの様子は死体ではない)。そんな絵ですよね。追い詰められているけど逃れたいという無意識のせいで発狂したはずですからね。
彼女の(リアもだけど)発狂は、言葉を変えれば二重人格なのかも。
というか、
あまり想像たくましくすると、作品をまじめに見られなくなりませんかね?(逃走)
>そういえばこの絵からはあんまり「死」を感じない
このオフィーリアの心の中は、このときは苦痛とも悲しみとも無縁なんだろうと思います。沈んでても自分が死ぬとかいう感覚がない(でもあの様子は死体ではない)。そんな絵ですよね。追い詰められているけど逃れたいという無意識のせいで発狂したはずですからね。
彼女の(リアもだけど)発狂は、言葉を変えれば二重人格なのかも。
本来の自分を失ってしまうほどの状況なんですもんね(TT)
王妃様の語るオフィーリアの死の場面って綺麗過ぎて
現実味はないけれど、私も苦しみとかとは無縁なままだったと思います。
そう信じたい気持ちも大きいですが。
そうですねぇ。
記録なら速さではなくどれだけの時間浮かんでいられたかとか・・・?
もう今週には見に行くので、
あまりふざけてる場合じゃないでしょうか?!(^^;
Re:可哀相・・・。(;;)
>本来の自分を失ってしまうほどの状況なんですもんね(TT)
本来の自分を強く持て、という教育を受けなかったというのもありそうですね。
>
>王妃様の語るオフィーリアの死の場面
そこまで見てたなら助けろ、
とか言って見たりして(殴)
>あまりふざけてる場合じゃないでしょうか?!(^^;
次にマリアーナのネタを考えましょうか(こら
涼しくなって、美術館に行くには良いですね。(多分)
私はコレ見た帰りにウナギせいろむしを食べました(川つながり<踏
本来の自分を強く持て、という教育を受けなかったというのもありそうですね。
>
>王妃様の語るオフィーリアの死の場面
そこまで見てたなら助けろ、
とか言って見たりして(殴)
>あまりふざけてる場合じゃないでしょうか?!(^^;
次にマリアーナのネタを考えましょうか(こら
涼しくなって、美術館に行くには良いですね。(多分)
私はコレ見た帰りにウナギせいろむしを食べました(川つながり<踏
ミレイ展行ってきたので、
再読させていただきましたv
なるほどですね~。
私も「説教シリーズ」好きですvv
クリアファイル買ってしまいました。
あとカワセミの絵も印象的でした・・・。
「オフィーリア」のロビンちゃんもですけど、可愛いなぁ、と。
「オフィーリア」もとってもよかったです。
やっぱり本物はすごいなぁと、
ただただ感心するばかりでした。
再読させていただきましたv
なるほどですね~。
私も「説教シリーズ」好きですvv
クリアファイル買ってしまいました。
あとカワセミの絵も印象的でした・・・。
「オフィーリア」のロビンちゃんもですけど、可愛いなぁ、と。
「オフィーリア」もとってもよかったです。
やっぱり本物はすごいなぁと、
ただただ感心するばかりでした。
Re:行ってきました♪
>ミレイ展行ってきたので、
>再読させていただきましたv
こんにちは。
予定通りですかね、よかったですね。
説教シリーズは友人はカップを買いました。
クリアファイルは、私は母にとられました(笑)
宣伝でオフィーリアが前面に出ているので、これで来場者が増えて、
イギリス絵画好きも増えてくれると…
私は遠くまで行かなくてすむんですが。
植物と鳥もですが、緻密に描かれた景色は
思い出すだけでホームシックになりそうです。
>再読させていただきましたv
こんにちは。
予定通りですかね、よかったですね。
説教シリーズは友人はカップを買いました。
クリアファイルは、私は母にとられました(笑)
宣伝でオフィーリアが前面に出ているので、これで来場者が増えて、
イギリス絵画好きも増えてくれると…
私は遠くまで行かなくてすむんですが。
植物と鳥もですが、緻密に描かれた景色は
思い出すだけでホームシックになりそうです。