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romancista
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イタリア・ルネサンス期を舞台にした、偽・歴史小説。実在の人物を、偉大さとか美化とは180度反対に、要するにムチャクチャに、しかもいかにもありそうな緻密さで描いているので、物議をかもしているらしいです。
作風としては『パフューム』に近いかも。謎解き部分はほとんどないです。でも読むだけでにじみ出る陰影と悪臭と、その合間の、よくも悪くも生々しい感じ。そういった描写がいかにもその場所を知っている人の筆致だと思います。

主人公ペッペは異形の小人で、悲惨な人生を送っていたけど、グノーシスの一派に出会ってから世界観が一変します。けれどもその教義は完全に異端とされ、ペッペの師は、貴族で有力者でもあるのに、娘が火刑になるまで動こうとしない。ペッペは、最愛の彼女を拷問し火刑にし、仲間を惨殺させた異端審問官を忘れませんでした。
話はそれからまた、ペッペが教皇レオの側仕えになってから見た、権力中枢に近い人々の、腐敗しまくった日常を容赦なく暴いていきます。教皇レオがまた、悪趣味で汚らしくて、無節操に気前がよく、どうしようもないブタなのです(とはいえ、周囲の人も十分にどうしようもないブタなので、その異常さが目立たないほどだが)。ペッペとレオのやりとりは、もう完全に現代的なフィクションなんだけど、これがテンポもいいし、とても小気味いい。
終盤、仇の審問官をぎゃふんと言わせるべく自ら動くペッペ。というのが、娘を殺されて狂っているようにしか見えない師が、審問官をどうにかしそうだったのです。師の名誉と救済のために、ペッペは知恵を絞って枢機卿に書類を作成させ、審問官を問い詰め、計画は成功したかに見える。ところが、師はとっくに計画を進行させており、弟子を使って審問官を拉致。異端審問と同じ段階をグロテスクに再現し、最後は裸で決闘を始めます。(オヤジ2人の全裸噛み付きあいの殺し合い。このクライマックスはいかがなものかと思う)

ペッペの計画が頓挫し、自分にも火の粉がかかりそうになった枢機卿は、憤懣やるかたなく、グノーシスを異端としてレオにその一掃を進言。忙しいから、と最初は取り合わなかったレオが、枢機卿からグノーシスの儀式の話を聞くと、急に関心を示してから「そらぁ、ほっとけないな」とばかりに許可する。
子供じみたところのあるレオが、一晩中窓の側で風に当たりすぎ、風邪を引いて寝込んだのはその直後。不摂生に関しては日ごろが日ごろだったため、浮上した毒殺説はあっけなく消える。

最後の最後にまだとっておきがあり、あれだけ汚らしく暗い話だったのに、ここで不意に、清浄なる光が差し込んでくるラストシーン。
でも個人的には、レオが一番好きでした。毒を盛られるのもしょうがないんだけども(あれ?)、こんな人が教皇だったなら、それはそれで、あけすけな人間性の象徴でもある。この程度の、愉しめるように書かれている小説で、いちいち物議というほうが、なんだか不自然な気がします。著者はペンネームで、長年イタリア留学をした哲学者らしいということ以外、経歴も何も不詳で書いてありません。
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