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romancista
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シカンとは、ペルー北海岸でに栄えた、インカの前の前(500年前)の、宗教エリートによる都市国家。本格的に調査が始まって30年くらいだそうです。日本人の教授がこの文明に「シカン」と名づけました。それは、現地の古い言葉で「月の神殿」を意味するらしい。会場の展示品のケースが三日月デザインなので、月、月、ということで、この名前はすぐに覚えました。


インカの前にはたくさんの国が林立したのだけど、その舞台はエクアドル~ペルーからチリにかかる、かなり広大な地域。シカンは、その前の国の文化と融合しながら支配するようになった、という証拠のひとつとして、ワリの影響の濃いミイラ包みが奥の方に座っていらっしゃいました。
シカン神は、この地域にありがちな「海から渡ってきた」王であって、(名前が、ニャインラップとかいう)この神=支配者を儀式などを通じて奉ることが大変重要視されていたようです。生贄は宗教儀式には必須。王の墓にも生贄はいますが、神殿の柱の下と思われる場所にも100人以上の生贄が埋められていたそうです。ロロ神殿の墓の主は、逆さに座った姿で埋葬され、頭だけは切り取られて(!)、そこにシカンの仮面がかぶせてあり、それは、死んだ支配者がシカン神として再生するというシンボルではないか、という、シカンの名づけ親・島田教授の説があるんですね。

シカンには黄金も使われますが、琥珀やトルコ石やエメラルドも使われています。琥珀やエメはアマゾンあたりにありそうだけど、トルコ石は、シカン周辺では採掘されない。つまり、遠くから、交易によって手に入れた宝石ということで、これを装飾品とした人物の地位の高さを物語ります。また、個人的にインカと一番違うと思った点は、ここの装飾品には海や水の生物のモチーフが多いこと。魚や貝やザリガニ、漁の様子などいくつもありました。シカンは、水も資源も豊富にあったということです。

エリートの装飾品は、金属加工の名手である工房の職人の手によるものです。身分の違いによって、デザインの同じ装飾品でも金の含有率を自在に変え、合金を作り、繊細な模様を打ち出しています。こういう職人はどうものちにインカに連れていかれ、技術が伝わったのだとか。(でもシカンの人種はインカとはDNAが違うらしい)

それだけ技術もあったシカンはなぜ消えていったのか。
詳しいことはまだ完全に明らかになっていないらしいですが、エルニーニョ現象からの自然災害や旱魃があり、シカン神が豊穣を保証するという前提が崩れ、人々の信用を失っていったとも言われています。
そうえいば、シカン展には武器らしい武器は見当たりません。そして、宗教や社会構造も仮説の域を出ない部分は多いようです。たとえば、戦争があって滅んだのか、自然に次の支配者に従うようになったのか、また、エリートはともかく庶民は、(当然のごとく生贄を要求する)シカンの神をどう考えていたのか――?
黄金の細工や、神殿の構造など、出てきたもののぱっと見でいえば、素人考えですが、これもたとえばエジプト文明のほうが格段に上に見えることは確かです。けれども、埋もれたままの文化の後が掘り起こされることは、人類の歴史を考える上では重要な作業なのかもしれない……今回の展示は実際の発掘作業と研究の過程も出ていたので、そんなことも考えさせてくれました。
生き埋めの危険や盗掘や水害にめげず、今後も調査をやっていって欲しいものです。シカンの核心部分の発掘は「まだ残っている」というのですから、楽しみですね。

シカン文明展(@福岡市博物館)は6月20日まで開催。
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