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romancista
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ブルガリアに眠る古代トラキアの秘宝・よみがえる黄金文明展@福岡市博物館は、7月5日に閉幕いたしました。
終わってしまったものを作品ごとにコメントしてももう見られないので、好きなところだけ切り取らせていただきます。


ギリシア神話に登場するオルフェウスは、竪琴の名手です。彼が妻のエウリデュケを亡くしたとき、冥界の王プルートーは、その竪琴に免じて、例外的に連れ帰ることを許しました。ただし、決して途中で彼女を振り返ってはならないと条件をつけて。
オルフェウスは、彼女がちゃんとついてきているのか不安になって、つい後ろを見てしまい、とたんに彼女の姿は消えてしまいます。
大体ここまでがオルフェウスの有名な話。そしてこのエピソードは人気があったのか、イングランド中世のバラッドの中で、「サー・オルフェオ」の物語として登場します。オルフェオは妖精の国にさらわれていった王妃を助けるために妖精の国を探して長い旅に出ます。そうしてようやく探し当てて、妖精の王と話をつけて王妃を取り戻し(途中で消えてしまったりしません)、長いこと留守にしていた城は、全く善良なる家臣に守られていて、みんな幸福に戻りました、という話です。まるで緊張感のない展開に、あれ?という感じでしたが、中世イングランドは血なまぐさい時代なので、歌の中だけでものんびり平和なのがよかったのか、ということにしておきます。さてそれから、グーンと時代は下って映画でいえば、「黒いオルフェ」の舞台はリオ・デ・ジャネイロ。だいぶ遠くまで行きました。

さて話を戻して、妻と二度と会えないと決まった彼は、実はどうなったのか?

彼の竪琴の腕前は有名なので、ディオニュソス祭で弾いてもらえませんか?と頼んできた女たちがいました。葡萄酒の神ディオニュソスの熱狂的な信者でマイナスと呼ばれる人たちです。けれどオルフェウスは悲しみのあまり、そっけなくこれを拒否。すると、ディオニュソスを敬わない!と怒り狂ったマイナスは彼を無残に殺してしまいます。

オルフェウスの最期はまだ説があって、エウリデュケをなくしてほかの女性に全く興味を示さない彼を、「自分たちを侮辱した」と怒り狂った女たちが殺す、という話。それから、オルフェウスはオルフェウス教というのを広めようとしたが、その地方はディオニュソスが信奉されていたので、異端として殺害される話。
これらの「殺害」は八つ裂きの刑です。そうして、首だけにされたオルフェウスは海まで歌いながら流れていき、とある洞窟にたどりついたという説があります。そしてその地の王が問題を抱えたとき、相談すると預言者のオルフェウスが助言を与えたというのです。

オルフェウスはトラキア地方の王子だったので、「その地」とはトラキア地方。現在のブルガリアに当たるところで、そもそも王族であるオルフェウスが子孫を助ける預言者になるというのは自然な流れに思われます。オルフェウス教がどんなものか知りませんが、洞窟でひそやかに予言をするというのも、やはりどこか異教めいた雰囲気があるわけで。
さらにオルフェウスは金色羊毛を探すアルゴ号のメンバーでもあります。つまり古代ギリシアにとってトラキアはバルバロイ(野蛮人)の国のはずが、オルフェウスはちっとも蛮人の王子という扱いではなくて、ヒーローの一人として人気者になっていたようです。

予言を与えるオルフェウスは、トラキア出土の飾り金具にそれらしく首で登場し、また、竪琴のコンクールに優勝する若者の絵柄の壷が残っています。また、彼に竪琴を贈ったアポロも、ローマ領同然となったトラキアで美しい姿で造られています。
古代のトラキアはギリシアと交流(よくも悪くも)があり、芸術品もギリシア仕込みのセンスのものが大半ですが、その中で特に多いのが、牛にヤギに水鳥、それと鹿に噛み付くライオンの図。
ライオンがアフリカと一部インドにしかいない猛獣になってしまったのは近代になってからのことです。となると、図像にたびたび登場させるほど数もいたであろうライオンを、養うだけの数の鹿(草食動物)を養うだけの広大な森が、当時のギリシアにはあったということでしょうか。
太陽の神アポロが王子に贈ったものが竪琴、すなわち音楽であったというのは、未開の地に芸術文化をもたらしたということもできるけれど、個人的には緑滴る森の空気とそこにさす木漏れ日を、そして跳ね回る鹿たちの姿をこそイメージしたくなるのです。
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